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鎌谷クラブ120000(0)-3
川島イーグルスB000030(1)-3
親善トーナメント決勝戦。
思うさま闘って、俺たちの野球は涙で終わった。
良くも悪くも「らしい」試合だった。どんなことにも終わりはある。
でも君たちには「次」がある。野球の神様は時に厳しい。けれど大丈夫。君たちは野球の神様に愛されているんや。


二)あおい

中)あきら
遊)たかよし
一)たつき
投)しゅう
右)とくむね
捕)たつま
左)りゅうた
三)しょうじろう

途中出場(とくむね→ゆうき、りゅうた→ゆうた)

バッテリー
しゅう(6回、101球、1安打3失点、四死5、3K)-たつま

 

初回

鎌谷は1番あおいが中安、2番あきらが四球、盗塁も絡めて無死二三塁のチャンス

 

ここで3番たかよしは「転がせば1点」で最低限の仕事、遊ゴロの間に1点をもぎ取る。

 

更なるチャンスで4番たつき

「転がすんだぞ!」の指示もショートライナー、三塁走者あきら戻れずライナーゲッツー

 

2回の鎌谷

先頭しゅうのセンター前で攻撃をたたみかけようとするもけん制死

しかしとくむね、りゅうたが四球でチャンスを拡大して9番しょうじろう

低目を鋭く振りぬいたしょうじろう「らしい」センター前2点タイムリーで2点追加!しかしあおいは足を活かせないフライで攻撃終了。

 

先制、中押しといい形で点を取ったが「責めきれない感じ」がつづく

 

先発しゅうは四死球は出すも6年生の守備陣が堅く守って無安打無失点でイニングを積み重ねる。しかし、1回19球、2回13球、3回24球と球数に不安が残る投球が続く。

 

「突き放したい」

しかし、攻撃陣は1,2回の3点以降はギクシャクした攻めに終始。

4番たつきは3度のすべての打席で得点圏にランナーを置いて凡退で打点0

3回以降、毎回得点圏にランナーを送っても1本が出なかった。

 

なんとか0点、無安打に抑えてきたしゅうだが5回

先頭のライトゴロをあおいとあきらが譲り合いのようなエラー。

ここからしゅうが崩れて死球、犠打から2番にレフトオーバー2点タイムリー(この日唯一の被安打)、3番に「わかっていても」というスクイズを決められ一気に同点に追いつかれる。

 

たった1安打、、

 

6回終わって3-3、試合は特別延長(ワンアウト1,3塁、三番バッターから)に

 

まずは鎌谷

先制、中押しもじわじわと追いつかれ流れは悪い。

監督はストライクバントの指示

外してきた川島軍!

 

これでカウントは有利に、、と思ったらあおいが三本間、ほぼホーム近くまで飛び出していた!タッチアウト!たかよしも凡退で無得点

 

大きな流れに飲まれつつある。完全な劣勢、、

川島軍、一死1,3塁スタート

監督は「敬遠で満塁勝負」と決めてたつまに外す指示。

 

しゅう、1球目

ど真ん中直球!外せのサインを出したたつま、なんとか飛びつく!相手もびっくり!

しゅう、2球目

外せ!外せ!とサインを送るたつま

しゅうの投球はど真ん中!

ちょこんと当てた打球は浅いライトフライ!

「浅い!タッチアップはないか!助かった!」

しかしライトあきらがグラブに当てての落球!

サヨナラのランナー生還!

 

完全に空気に呑まれた鎌谷軍、わずか2球で失点し試合終了!

親善トーナメント優勝を逃した。

 

初回、たつきがゴロを打つことが出来れば

あきらがライナーバックできれば

たくみが「ライナーバックあるよ」と声かけしていれば

しゅうがけん制死していなければ

4回と6回、しょうじろうが決めていれば

りゅうたがレフトオーバーをとめていれば

たつきが3度の好機で一度でも打っていれば

たかよしが特別延長で決めていれば

しゅうが外せのサインをしっかり理解できていれば

あきらがライトフライをとっていれば

 

多くの「たら、れば」はもうどうだっていいのだ。

 

思うさま闘って、やられた。

 

相手に、そして自分たちに負けた。

これが君たちの野球だった。

 

野球は難しく、残酷だ。

もしかしたら君たちは野球への「貪欲さ」が足りていなかったかもしれない。

 

でも思えばこれが俺たちの野球だった。

 

君たちが川島公園で特別延長に入った熱戦をしている同じころ、海の向こうではワールドシリーズ、まさに世界一を決めるド軍とレ軍が延長18回の死闘を行っていた。

 

「超」がつくスーパースター同士が

年棒20億円の賢いゴリラがこん棒振り回しているような化け物たちが

100年以上の歴史を持つチーム同士が

なかなか勝負を決められず、死力を尽くして18回までなだれ込み、とんでもない試合を行っていた!

 

このワールドシリーズの1試合でもどれだけの「たら、れば」があっただろうか

野球の天才が集まって、死力を尽くしあってもこんな試合になる

 

野球はおそろしい、むずかしい、そして

 

面白い!

 

試合後、監督は

「これが君たちの野球だったな」といった。決して責めているのではない。怒っているのでもない。「君たちらしかった」この言葉が1年間いや、三軍から君たちを見ていただいた監督から出た意味については説明は要らない。君たちが一番わかっているよな。

 

代表は

あおいの特別延長での走塁を例に挙げて『「あおいが」じゃない。みんな「自分だったら」と考えてごらん。』とおっしゃった。「野球はむずかしいね。でもこの経験は中学、高校に行ってもきっと活きる」とおっしゃった。その意味も説明は不要。きみたちが一番わかっているよな。

 

区大会が終わって、「きみたち」の野球は終わった。

まだフレッシュカップと南シニアが残っているが、それはまた、もう、違う闘いだ。

明日のベイサイドの試合も違う意味のゲームになるだろう。

 

来月からは6年生は中部会やオール保土ヶ谷に行く。5年生は4年生と「新一軍」を形成していき、鎌谷クラブで新たな闘いに進む

 

君たちの野球が終わったと書いた理由は、もうこのメンバーで練習は出来ないということを意味している。

 

今日のプレーを反省してワンアウト1,3塁からの監督のシートノックは出来ない。

ライナーバックの練習も、スクイズ警戒の前進守備の練習も、セーフティーバントの練習も

 

このメンバーでは

 

もうできない

 

だから俺たちの野球は終わったのだ。

練習できなければ、俺たちの野球なんてできないんだから。

 

野球の難しさ、奥深さ、流れの怖さ、3点リードが余裕から苦しみに変わるさま、飲み込まれていくチームの雰囲気、それを思い知って、痛いほど味わって

 

俺たちの野球は、終わったのだ。

 

たかよしが、あきらが、あおい、たつまが流した涙はいろんな感情が混じっていた。

涙は出なくても、彼らが泣いた涙を見つめている選手もいた。

 

これは少し難しいし、おっさん何言ってんだ?とおもうかもしれないが

「なぜ涙がでたのか」「なぜ涙も出なかったのか」という「涙のわけ」はどうでもよくて

君たちには「その涙の色」を覚えておいてほしい。

 

ゲームセットの瞬間の川島公園の匂いや風景。ショートのポジションで崩れ落ちたキャプテン、エラーをして呆然としたあきら、「外せ!」のサインを懸命に出したのに打たれて天を仰いだたつまの姿。それを「涙の色」として覚えておいてほしい。

 

前に進むしかない君たちよ

 

その進んだ先にはそれぞれの「新しい野球」が待っている。野球は難しく恐ろしいが、やさしく、楽しいのだ。鎌谷で「このメンバーで」やった野球を胸に、野口代表、大原監督の教え子としての誇りを胸に、きみたちが野球が好きである限りもれなく全員に次の「新しい野球」が与えられる。野球は君たちを迎えてくれる。

 

闘いは終わった。

 

明日はベイサイド2試合。

 

さぁ楽しもう!

 

もう苦しくない、精一杯笑顔で楽しもう。

 

死闘ではない闘いがあったっていいんだ。

 

野球の神様は、きみたちが考える以上に心が広い。度量が大きい。

 

残りの試合は「思いっきり楽しめるご褒美」だと思ってもいい。

おっさんは、そう思う。

 

どんな物語にだって、「エピローグ、あとがき」はある。

一年間よくがんばった。よく闘った。

きみたちは好きなように物語のエピローグを紡げばいい。

 

野球は、最高に難しくて、苦しくて、楽しくて、面白い

そしてやさしい。そういうものなのだ。

 

すべては涙とともに終わった。

 

けれど

 

ご飯を食べてお風呂に入って布団にもぐれば

 

朝が来て

 

新しい野球は待っている